積むよりも速く読め!

学術書になじみがない人にも読みやすく、学問の面白さが伝わるような書籍を紹介していきたいです。

あのワクチン開発はなぜあれほど早く成功することができたのか 『mRNAワクチンの衝撃』ジョー・ミラー他/2021/早川書房

真に大きな変革をもたらすのは、資料や論文ではなく、人なのだ。(p. 406) 本書は2020年から世界で猛威を振るっている新型コロナウイルスに対するワクチン開発の最前線を追ったドキュメンタリーである。主役であるビオンテックは新型コロナウイルスについて…

理論物理学者には日常がこう見えている 『物理学者のすごい思考法』橋本幸士/2021/インターナショナル新書

この「たこ焼きの半径になぜ上限が存在するのか」という問いに、「そりゃ口に一口で入るサイズやからやろ」と答えるのは簡単である。そう答える前に、ちょっと待て、物理的な理由が存在するのではないか。そう考えるのが物理学者の正しい姿であろう。僕は考…

基礎科学を「真剣に楽しみ」続けるひとりの研究者の人生 『探求する精神 職業としての基礎科学』大栗博司/2021/幻冬舎

たとえば研究プロジェクトを選ぶのなら、自らの知的好奇心に忠実であれということです。本書第一部で仏教学者の佐々木閑さんとの対談を引用して、「どんなものでも機能が発揮できる時が幸せなのだ」と書きました。研究時間は限られているので、自分の能力が…

複雑で不確実な時代に成功するための必須条件『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』エイミー・C・エドモントン/2021/英治出版

発言より沈黙を好む心理的・社会的な力の基本的非対称性、つまり自己表現より自己防衛しようとする性質は、今後も変わらないだろう。だが発言と沈黙では、見返りもまた非対称である。自己防衛したところで空虚な勝利しか手に入らないのに比べ、自己表現すれ…

基礎研究の現場を垣間見る。 『「役に立たない」研究の未来』(初田哲男ほか, 2021, 柏書房)

ただ、歴史を見るに、それでも人びとは、「役に立つかどうか」という話をすることをやめられなかった。やめられないのはなぜかというと、それがおそらく「政治的」な言葉、「未来」に関する言葉だからだと私は考えています。「有用性」とはすなわち、未来に…

教養を目指し続ける日々を送ろう 『教養の書』〈2〉(戸田山和久, 2020, 筑摩書房)

次に考えなければいけないのは、どうやったら教養への道を歩みだすことができるかだ。「歩みだす」というところがミソ。なぜなら、すでに述べたように教養は自己形成のプロセスなので、これが終わりということがありえない。教養への道は果てしなく遠い。だ…

哲学者が考える「教養」のカンペキな定義とは。『教養の書』〈1〉(戸田山和久, 2020, 筑摩書房)

大学の4年間の教育は、「専門家育成をチョットだけ」ではないそれ自体完結した目的をもつべきだ。そうでないと学生が気の毒じゃないだろうか。その目的こそ「教養の涵養」ではないかと思う。したがって、教養教育は専門教育の準備ではない。それ自体の目的…

ブログの紹介

はじめまして。めるすくと申します。 これまでNOTEで読書ブログをやっていたのですが、しばらく放置してしまっていました。なんとなく使いにくかったのもあり、更新再開にあたってサービスを移行しました。 簡単な自己紹介をすると、仕事をする傍らで修士時…